イベント お知らせ ブログ ワイルドライフマネジメント 活動報告 知床の自然

オンライン特別連続講座「ワイルドライフマネジメント」質問へのお答え(第7回実施分)

「ワイルドライフマネジメント」第7回実施 日本の野生動物管理の歴史 ― 保護から管理へ

アンケートのご質問への回答は、以下の通りです。※URLはリンクされていませんので、コピペしてブラウザに貼り付けてアクセスしてください。なおURL表示の下に資料名の記載されたものは、そのページにアクセスして、下にあるリンクを探してください。

Q1 日本では農林業を行い始めたころに大型獣が不在だったため、獣害対策の意識が薄い(被害者意識)との事でしたが、海外の農林業者はまた違った考え方なのでしょうか?
A1 野生動物の資源的価値の高い国(例えばノルウェー)では、農業被害はあまり問題とされていません。国によって被害意識は異なるのでしょう。

Q2 日本で狩猟者のイメージを殺すものから管理する重要な役割に変えるためにはどのようなことが必要だと考えますか?
A2 狩猟者教育の仕組みを作ることだと思います。

Q3 十万年単位の過去の鹿の個体数を、どうやって推定されたのでしょうか?
A3 塩基配列の情報に基づき、過去10万年間の有効集団サイズ(繁殖に関わった個体数)を遺伝学的⼿法により推定しています。詳細は 以下の解説と原著論文にあたってください。
www.ffpri.affrc.go.jp/press/2023/20230404/documents/20230404press.pdf
https://doi.org/10.1177/09596836231157063

Q4 引用されていた「愛甲・2010」の文献に興味があるのですが、調べてもどの文献か分からなかったので、お手数をおかけしますが、教えていただけますと幸いです。
A4 愛甲・瀬川 2010です。拙著『ワイルドライフマネジメント』の文献リストをご覧ください。

Q5 保護は環境省、管理は道府県、なぜ一体で管理できないのか?
A5 野生動物管理は1999年の法改正によって、これまでの環境省からの機関委任事務から都道府県が責任をもつ仕組みに替わりました。講義で課題としたのは、環境省と農林水産省の二つの法律で野生動物管理が実施されている点です。

Q6 兵庫県のシカの減少は集中的な徹底した捕獲によるものとお聞きしました。現在猟友会は狩猟免許保持者の約半分の10万人と聞きました。残りの半分の狩猟者はどのように活動をしているのでしょうか? この方々を活用する施策はあるのでしょうか? 猟友会の縄張り争いや報奨金の問題も聞きます。猟友会一辺倒の捕獲体制について、どのようなお考えがあるかお聞かせください。
A6 大日本猟友会のHPによれば、現在では全体で約21万件の狩猟免許(ただし重複所有者あり、狩猟者の実数は約15万人)で、猟友会の会員は約13万5千人とあります。残りの1万5千人の方は猟友会の活動に依存しないで独自に狩猟をされているのでしょう。猟友会の会員はもともとスポーツハンティングが目的の方です。高齢化と減少が進むなかで、アクセスが困難な高標高地域や危険が伴うクマ対策に、猟友会会員のボランティア活動で獣害対策を行うことはそろそろ限界だと思います。狩猟者の育成とともに捕獲専門技術者の育成が必要だと思います。

Q7 狩猟圧によってシカが増減していることがわかりましたが、単に狩猟を進めて個体数を管理するだけでなく、駆除の順番、例えばシカの駆除により外来植物が増えるなど、駆除の順番を考慮した事例はどのくらいあるのでしょうか? 現状はシカが増えすぎて順番などを気にせず、とにかく捕獲圧を高めていくという方針でよいのでしょうか? ある程度、密度調整ができてから生態系についても考えるとの方針でいいでしょうか? それとも最初から生態系を考慮して管理したほうがいいでしょうか?
A7 捕獲の大部分は狩猟ではなく駆除が担っています。駆除の順番が何を意味するのかわかりませんが、長期間にわたり、シカの採食の影響を受けた地域では、低密度状況を数十年規模で維持しないと植生の回復が見込めません。

Q8 野生動物管理の主体となるのに最もふさわしいのは行政でしょうか? その場合は国でしょうか? また、NPO等利害・地域等にとらわれない団体等では困難でしょうか?
A8 地域が主体となり、中間組織のNPOが管理の実施、都道府県と国が支援するというやり方があると思います。最終段階の講義で議論します。

Q9 質問が多いので「A〇.・・・」ではなく「→・・・」で回答します。
① スポーツハンティングによる狩猟の場合は、狩猟者は事前に狩猟個体の許可を受ける必要があるのでしょうか? →狩猟者登録の方法はネットで調べればわかります。
② 日本のスポーツハンティングは狩猟免許の取得及び狩猟者登録が必要なため、他国のように旅行者によるスポーツハンティングは認められていないという認識でよろしいでしょうか? →そうです。
③ 弥生時代にはイヌ・ブタが家畜として飼われていたとのことですが、日本の場合は大陸から輸入されたものなのでしょうか?それとも野生のオオカミやイノシシが家畜化されたものなのでしょうか? →弥生時代のブタは渡来してきたものと考えられています。縄文時代にも犬はいましたが、弥生時代にはブタと同様にさまざまな品種が持ち込まれて食用にされたようです。
④ 生類憐みの令では家畜は食べてはいけないが、獣肉食が禁忌ではなかったのはなぜでしょうか? →農業を振興する意味があったのではないかと思います。
⑤ 当時も少なからず獣害等があったのでしょうか?→農耕の始まりとともに獣害が起こったと考えられます。
⑥ 戦争の影響で毛皮獣の輸出が増加したと説明されていましたが、なぜ戦争と毛皮獣の輸出が関係しているのでしょうか? →武具や防寒具として利用されたからです。
⑦ 101種のうち5種が絶滅したと説明されていましたが、トキも絶滅し再導入されたと聞きましたが、これは再導入されたため絶滅種にはカウントされないのでしょうか? →哺乳類のみを対象としています。
⑧オキナワオオコウモリ、オガサワラアブラコウモリ、ミヤココキクガラシコウモリ等コウモリの絶滅が多いのはなぜでしょうか? →詳しい絶滅の原因はわかりません。
⑨特定希少鳥獣については一定の地域でのみ個体数が増えているので、他の生息数の減っている場所に再導入しては良いのではないかと考えたのですがそれは遺伝子等の問題から難しいのでしょうか?(前回の講義の中国の事例においても、個体数が減っている国に再導入してもよいのではないかと考えました) →国外だけでなく、国内の別の地域から持ち込まれた生きものも外来種です(『国内外来種』。遺伝子などの交雑問題のほか、種間競争、生態系への影響などが懸念されます。
⑩環境省が「有害駆除」、農林水産省が「個体数調整」を担っていることからも分かるように日本の捕獲制度は捕獲の実施主体と実施者が多様で複雑という事情があると思いますが、これを1本化するという方針はないのでしょうか? →有害捕獲(駆除)は、市町村(農林水産省所管の鳥獣被害特別措置法)、個体数調整は、都道府県(環境省所管の特定計画制度)で、二つの法制度で捕獲が実施されています。1本化の議論はありませんが、私は岩波の「科学」2024年4月号の野生動物管理特集号で、長期的な視点にたてば、野生動物管理を土地管理義務の一環として位置づけ、環境省・農水省の共管法ありは2つの法律の一元化が必要であると述べています。
https://www.iwanami.co.jp/book/b644446.html

Q26 科学 2024/4はAMAZONで購入が一般的ですか?書店にもありそうですか?
A26 岩波書店のホームページで確認してください。

Q10  「家畜の肉は食べなかったが、獣肉は食べていた」とありますが、ぶたはどのような目的で家畜化されていたのでしょうか?
A10 食用目的です。

Q11 人間による「賢明な利用」がなくなったことが大きな問題とおもいますが、何か有効な活用法はないのでしょうか? 食肉処理、解体処理場などは、大都市に造るのは難しいですが。
A11 人間による自然の持続的かつ「賢明な利用」の学びの場として、学校給食にシカ・イノシシなどの獣肉を食べる食育が良いと思います。農水省のHPにもありました。
www.maff.go.jp/chushi/chojyuu/attach/pdf/index-29.pdf

Q12 北海道のアイヌ文化の話がありましたが、琉球などの南方系の島嶼部でどのような狩猟文化や歴史があったのか気になりました。リュウキュウイノシシとの人々との関わりについて知りたいです。
A12 ぜひ、調べてください。

Q13 「法の整合性と捕獲の担い手」ページのように理解したく予算の流れを個人で調べましたが環境省、農水省、北海道、市町村の予算名、予算規模、予算の出どころの関係を理解するのに大変苦慮しました。次回以降講義にて解説頂けるととてもありがたいです。よろしくお願いいたします。
A13 これは私の講義の範疇を超えています。日本学術会議での審議のおりに、予算資料を集めましたので、ご覧ください。
https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/yaseidobutu/yaseidobutu.html
第4回(平成30年11月15日)の会議資料
・資料4-1 H31鳥獣被害対策・ジビエ推進関係予算(主要事項)(PDF形式:309KB)
・資料4-2 H31鳥獣被害対策・ジビエ推進関係予算一覧(PDF形式:181KB)
・資料5 鳥獣対策の関連予算の法令根拠について(PDF形式:7KB)

Q14 講義の中で紹介のあった獣害防止のための作物管理など、現場で農家が行なっている伝統的・日常的慣習はなかなか文献には出てこないと思います。なにかよい文献があれば知りたいです。
A15 現場で農家が行ってきた伝統的・日常的慣習については、「江戸時代の獣害対策」を調べるとわかると思います。

Q15 指定管理鳥獣等捕獲事業における捕獲従事者育成は、実行に向けてどの程度進展しているのでしょうか? 未だ検討すらされていない状況なのでしょうか?
A15 私は捕獲従事者育成の実態を把握していません。なお、指定管理鳥獣捕獲事業の評価(捕獲数が中心)は都道府県で委員会を設けて実施しています。

Q16 イノシシが東北地方、北海道に少ない原因として、積雪があるということを以前聞きました。しかし、今日の講義では江戸時代前半頃までは生息していたということだったと思います。この場合、積雪により生息数が少ないというのは間違いのように思います。現在、東北地方、北海道でイノシシの生息が他地域と比較して少ないのは、狩猟により数が減少したからという認識が正しいでしょうか?
A16北海道にはもともとイノシシは生息していません。東北などの積雪地帯でイノシシが少ないは、江戸時代から明治かけて捕獲によって根絶したからです。

Q17兵庫県はシカの個体数管理に比較的成功しているとのことだったが、2017年以降も個体数の増加を抑制できているのでしょうか? 抑制できているとすると、どのように対策をアップデートしているのでしょうか?
A17 市町レベルで、比較的精度が高い個体数推定が可能となったため、捕獲目標を達成している市町では個体数が減少傾向を示しているのに対し、未達成の市町では個体数が増加傾向にあることがわかりました。また、未達成の市町では捕獲体制や予算措置の整備が遅れていることも分かったため、その支援を行っています。岩波の科学 2024年4月号に兵庫県立大学の藤木さんが解説をされています。

Q18 大型獣の分布の歴史的な変遷について、縄文前期から江戸時代中期という長い期間において分布域に大きな変化はなかったのに、最近になって急激に減少・増加を繰り返しているのは、ひとえに人間の活動のせいと認識してもよいのでしょうか? 保護政策による分布回復を達成した今、昔のように全く関与をやめてしまったら今の分布域はそのままキープされたりしないのでしょうか?
A18 人間活動が野生動物の生息に与える影響が一番大きく、放置した場合には都市部にまで野生動物は侵入・定着するでしょう。

Q19 日本の野生動物の絶滅率が著しく低いということは、海外から評価されているのでしょうか?
A19 海外の評価は聞いたことがありません。そもそも、日本にこれほど野生動物の種数と生息数が多いことも知られていないと思います。

Q20 鎌倉時代・室町時代にシカを乱獲しシカの国内個体数が激減したため、東南アジアから輸入したというお話でしたが、輸入したのは鹿革だけでしょうか? それともシカは生きていたのでしょうか? もし生きていたとしたら、現在日本にいるシカはその子孫でしょうか?
A20 鹿皮を輸入しています。

Q21 自然保護を訴える人の中には、「人間が自然に手を加えるべきではなく、多様性を損なったとしてもあくまでも自然の遷移に委ねるべき」といった極端な意見の方もいます。そういった意見に対して、ワイルドライフマネジメント的にはどのように向き合えば良いのか?どのような論を展開すれば良いのでしょうか?
A21 異なる価値観を持つ方を説得するのは困難ですが、講義の最後のスライドで、私の考えを述べます。

Q22 遺伝子の解析はどうするのですか? ミトコンドリアでわかるのですか?
A22 講義で説明します。

Q23 ニホンジカの亜種についての記載を見て、個人的に調べたところキュウシュウジカは四国も含まれるとの記載がありました。四国も本土と離れて分断されていますがシコクジカとなっていないのは何故でしょうか?
A23 四国のシカはホンシュウジカです。講義で説明します。

Q24 白糠丘陵で行われたプロジェクトで、シカの死亡要因などがわかっていたらぜひ伺いたいです。
A24 講義でお話します。

Q25 シカやイノシシをはじめとする大型獣の増減に人間活動が大きく影響していることを改めて感じました。人間生活の中に自然との関わる時間がますます減っていく時代に、野生動物の数をコントロールしていくことはかなり困難に思えます。他人任せではいけないと思いつつも、街の人間としてできることがわかりません。何かあるでしょうか。
A25 シカやイノシシの料理を食べることが、生態系を守ることにつながることを実感してください。

-イベント, お知らせ, ブログ, ワイルドライフマネジメント, 活動報告, 知床の自然