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【知床コラム】第3回:知床は北の果て?

【知床コラム】では、当財団の業務執行理事・中川元が、季節ごとにさまざまな表情を見せる知床の自然情報などをお伝えします。第3回は「知床は北の果て?」についてです。

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知床は観光シーズンの真っ盛り。たくさんのお客さんが「南から」やってきます。「北の果て知床」は観光案内や歌詞(さとう宗幸の『岩尾別旅情』)にも使われた知床のイメージの一つです。確かに知床は日本の最果て、北海道の北東端に位置しています。でも、より大きく地球規模で見て下さい。知床はオホーツク海の最南端に位置しているのです。

オホーツク海の衛星写真(冬期)

日本列島の地図だけを見ていると知床は「北の果て」と思いがちですが、「南の果て」でもあります。そしてこのことが、知床が特異な生態系と、生物多様性を持ち、世界遺産にもなった理由なのです。

知床の生態系を支える豊かな海、その養分はシベリア大陸を流れるアムール川からオホーツク海に供給され、流氷のメカニズムによって「最南端」の知床沿岸にやってきます。この養分がプランクトンの大増殖をもたらし、多様な海洋生物と陸上生物を支えています。オホーツク海北部で繁殖した鳥たちは知床に南下して越冬します。オホーツク海と太平洋を分ける千島列島からは海獣類が南下してきます。多くの渡り鳥や回遊する哺乳類が知床の生物多様性を高めています。

日露専門家による北方四島シンポジウム(2017.7.8 於・知床博物館)

先日、知床博物館で日露の環境分野の専門家によるシンポジウム「北海道本島・北方四島の淡水魚類・陸生哺乳類」が開かれました。ロシア政府の保護区レンジャーや営林署長らから北方四島の野生動物の生息状況の報告があり、四島で共同調査を進めている日本の研究者からは淡水魚類やヒグマの調査結果の報告がありました。

日本とロシア両政府は2009年、オホーツク海を初めとする日露隣接地域における生態系保全に関する協力プログラム(日露隣接地域生態系保全協力プログラム)を締結しました。それに基づく共同調査や専門家交流が続けられています。知床と北方四島はオホーツク海最南端の一体化した生態系として重要です。この地域の生物多様性を維持し、持続可能な利用を行うためには両政府による保全の取り組みが欠かせません。

THE TIMES COMPREHENSIVE ATLAS OF THE WORLD(12ed)表紙の知床と北方四島。

この写真は、「THE TIMES ATLAS (タイムズ世界地図帳)」の第12版(2007年)の表紙です。掲載された写真は、知床と北方四島を高空から撮ったものです(スペースシャトルからの撮影)。世界的に権威のある地図帳が表紙にしたことは、世界遺産に登録された知床を含むこのエリアの重要性を世界に紹介するものでした。

「南の果て」知床には、南からの訪問者だけでなく、野生動物のように、北からも多くの人達が訪れる日もそう遠くはないと思います。

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