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丹保憲仁さん(当財団相談役・元北海道立総合研究機構理事長・北海道大学名誉教授(第15代総長))を偲んで

当財団の設立当時から相談役としてご指導を頂いていました丹保憲仁先生が今年8月6日にご逝去されました。環境工学の第一人者として、また、北海道大学の総長や放送大学の学長として教育研究に残された業績、退官後に北海道のために尽くされた貢献は広く知られているところです。当財団の運営にも数多くのご助言、ご指導をいただいておりました。

私が丹保先生に初めてお会いしたのは2007年、北海道博物館協会の理事会の席でした。丹保先生は北海道大学の総長を退任された後、北海道開拓記念館(現・北海道博物館)の館長に就任され、北海道博物館協会の会長として道内の博物館・美術館・動植物園の連携や課題解決に努められました。当時私も同協会の理事を務めており、年に数回の理事会や終了後の懇親会で丹保先生とお話をし、深い学識と気さくなお人柄に接する機会を持つことができました。中でも、知床博物館の活動を高く評価いただいたことが忘れられません。特に出版活動が充実していることをお褒めいただき、大変うれしく思ったことでした。その後も北海道博物館の構想検討会にも呼んでいただき、先生の幅広い見識や北海道の発展への思いに接することができました。

当財団が設立された2013年の夏、丹保先生が理事長をされていた北海道立総合研究機構の本部を役員数人で訪問し、当財団の趣旨・目的等をお話ししたところ、教育機関の必要性をよく理解いただき、快く相談役をお引き受けいただきました。その後も折に触れてご助言をいただいたり、著書をお送りいただきました。先生はご専門の「水」と人との関わりから、地球環境問題や食糧・エネルギー問題にも見識が深く、持続可能な日本の将来と北海道の役割についても提言されています。グローバルな視点から北海道のことも考えておられたことは、先生が道北の豊富町のご出身であることによるものと思います。

2017年5月に丹保先生は奥様とお二人で知床を訪問されました。斜里町に来られたのは50年ぶりとのこと。1960年代に起こった工場排水処理と環境保護の問題で、専門家として調査に来られて以来とのことでした。この問題は排水処理のために海岸砂丘林内に浸透池を作るという計画で、当時全道的な環境問題として大きな話題になっていました。その後の経過にも心を痛められていたとのことでしたので、浸透池の役割は程なく終わり、跡地は植林され、今では森林の復元が進んでいることを説明しました。知床には3日間ほど滞在され、世界遺産地域内や知床博物館をご案内し、地元役員との懇談の場も持っていただきました。写真が趣味の先生は一眼レフカメラを常に離さず、盛んに撮影されていたことが思い出されます。

その後、羽田空港で偶然お会いしたことがありましたが、リュックサックを背負ってスタスタと早足で歩かれる姿はとてもご高齢とは思えませんでした。それだけに訃報をお聞きした時は信じられず、まだまだ長生きされて当財団の活動を見守っていただければと大変悲しく残念に思った次第です。 これまで丹保先生にいただいた温かいご指導に厚く感謝申し上げると共に、ご冥福を心からお祈り申し上げます。

中川 元(当財団業務執行理事・元知床博物館館長)

知床を訪れた丹保先生(2017年5月)

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