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ワシ類への給餌問題

2016/10/03

根室海峡に入っていた流氷が、先週末の東寄りの強風で一気に近づいてきて羅臼に接岸した。

 港の近くにオジロワシやオオワシが集まり、氷の上にとまっている光景が見られた。
 実は流氷の上に雑魚や魚のアラをまいてワシたちをおびき寄せて観光客に見せている。
 写真「愛好家」たちからの要望が強いのでいつの間にかこんなことが始まってしまったが、この「給餌」に対して、いろいろな意見がある。
 羅臼に集まる海ワシ類は、もともと漁船からこぼれ落ちる魚を餌とするために集まっていた。かつての羅臼では、現在の10倍くらいのスケトウダラが漁獲されていていて、網を上げる時に10匹や20匹の魚がこぼれ落ちることを漁師たちはあまり気にしなかったのだろう。
 そんな人間の営みがワシたちを呼び寄せる原因の一つになったのだと思う。
 だから、スケトウダラの頭や内臓を「給餌」することは、彼らが昔から食べていたものを与える行為であり何ら問題ない、というのが「賛成派」の論理だ。
 もちろんこの意見への反論もある。
 ワシの数に対して適正な魚の量が与えられているか。過剰な供与は海の汚染など他の問題を引き起こすおそれもある。
 魚を丸ごと一匹食べるのと、頭や内臓などを選択的に与えられる場合との違いを気にかける意見もある。
 それぞれもっともなことだ。
 オジロワシは世界で2万~4万羽、オオワシは5千~7千羽程度の生息数だとされている。特にオオワシは極東に偏って分布しているので、個体数を減らす何らかの要因が作用した場合、一気に絶滅に向かう危険性も指摘されている。
 なかなか悩ましい問題であり、どのような結論を出すべきか悩ましいところだ。
 ただし、どんな場合でも第一番に優先させなければならないのはワシたちの種の維持だ。 「良い写真を撮りたい」とか「一人でも多くの観光客を集めてカネ儲けをしたい」などという人間の都合をその上に載せてものを考えることは断じて許してはならない。
 こんな共通認識からこの給餌の問題を議論していけば、いずれは正しい方向が見えてくるのではないだろうか。
(金澤裕司)
※今回のコラムは金澤理事のブログ「ピョートルのつぶやき」(3月19日)から転載しました。

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