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ドキュメンタリー映画「最初にカケスがやってくる」斜里上映会

2016/10/03

知床のエゾシカ猟を追ったドキュメンタリー映画「最初にカケスがやってくる」の上映会(+トーク)が、6月7日斜里町のゆめホール知床を会場に開催されました。監督は第24回木村伊兵衛賞を受賞した写真家、ホンマタカシさんです。ナレーションもキャプションも一切ありません。地元民ですらほとんど目にすることのない、雪深い知床の森で繰り広げられるシカ猟の様子が、映像と音だけで淡々と続きます。唯一の説明的な場面として、梶光一さん(東京農工大教授)の講演が断片的に挿入され、全国で起きているシカの急増とハンターの減少が語られます。このシーンは、昨年当財団が東京で開催したフォーラムの一コマでした。

映像ではシカの死体が雪の斜面を引き上げられて行くシーンや、ハンターによって手際よく解体されて行くシーンがあり、静寂な森の中に、銃声、ウインチの音、ハンター達の声が響きます。そして、冒頭から最後まで繰り返し挿入されているのが、シカの死体に集まる鳥たちのシーンです。最初にカケスが来て、次にカラスの群れが集まり騒々しく騒ぎ立てます。カラスについばまれ徐々に死体は小さくなり、再びカケスが来て最後にはクマタカがやってきます。騒々しいハシブトカラスの声のバックにはオジロワシやワタリガラスの声も入っていました。カケスの独特の声も何かを暗示するようです。映画全体の中でかなり長い時間を占めていた、この死体と鳥たちの光景でしたが、この長いシーンが見る者に考える時間を与えてくれました。あえて説明を入れず、野生と人間との関わりの事実を映像と音だけで伝えることで、見る人それぞれが様々な印象を持ち、様々に考えを巡らす。制作者のホンマさんはそうしたことを期待したのではないでしょうか。

会場は180人もの来場者で埋まり、若い世代も多く見られました。都市住民・地方住民に関わらず、この映画が多くの人に鑑賞され、人と野生動物との関係を考えるきっかけになれば良いと思いました。

(中川元)

img_232015年6月8日付 北海道新聞紙面より

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