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オンライン特別連続講座「ワイルドライフマネジメント」質問へのお答え(第14回実施分)

講座「ワイルドライフマネジメント」第14回「野生動物管理の日本モデル」

アンケートへの質問の回答は、以下の通りです。長期間にわたる聴講ありがとうございました。また、10月の「知床ミーティング」https://shiretoko-u.jp/2024/07/18/shiretokomeeting2024/に是非ご参加ください。

Q1 鳥獣管理の3本柱として被害防除、個体数管理、生息地管理が挙げられていたかと思いますが、生息地管理として具体的に何をしたらいいのか、いまひとつぴんときません。具体的な施策の例がありましたら教えてください。
A1 教科書的に述べると、「生息地管理とは、野生鳥獣の生息地を適切に整備すること、あるいは野生鳥獣の生息地と農地との間に緩衝地帯を設けることによって、農地や集落への出没を減少させ、被害を減らす管理である。」となります。
農林水産省HP www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/old_manual/manual_inosisi_sika_saru_jissenn_old/data1.pd
具体的な施策の例として、国有林野事業では、希少な野生生物の生育・生息地等を保護・管理する保護林《詳細はこちら》を中心にネットワークを形成する「緑の回廊」を設定し野生生物の移動経路を確保することで、より広範で効果的な森林生態系の保護を図っています。https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/sizen_kankyo/corridor.html

一方で、札幌市では都市にヒグマが侵入することが頻発していることから、人里への移動経路(河畔林、防風林等)の遮断措置がとられている。これも生息地管理の実例である。www.soumu.go.jp/main_content/000742552.pdf

Q2 昨今、ニュースでもよく聞きますが、が起こらないような対策を取っているところ、または、方法があれば教えて欲しい。
A2 環境省の以下のHPを参照してください。
クマ類の錯誤捕獲によるリスクと対策
www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/pdfs/chpt5.pdf

Q3 土地所有者には野生動物保護管理の責務は無い、とのお話がありました。鳥獣保護管理法では、柵に囲われていない場所であれば自由に狩猟等が出来る、とのお話がありましたが、自衛隊の基地は安全管理上で柵があるので法律的にも狩猟は出来ないかと思いますが、国有林について林野庁が入林届などで、立入を制限しているのは何を根拠にしているのでしょうか。国有林として、狩猟を制限する根拠が無いかと思いますが、どのような整理なのでしょうか? 土地所有者が立入制限が出来てしまいますと、日本の狩猟や乱場制度は機能しなくなってしまうのでは、と思いました。
A3 国有林における事業を安全に実施するために、入林制限を行っています。

Q4 札幌市でも国有林の面積は、市域の約50%(市域内の林地で見ると約78%)を占めており、是非とも国にもっと主体的にエゾシカの捕獲を実施していただきたいところですが、これまでに有識者の方々から国に対してエゾシカをもっと捕獲するよう働きかけは行われているのでしょうか?
A4 エゾシカ対策有識者会議で、私は北海道の国有林におけるシカの捕獲は道の特定計画にしたがって実施すべきだと繰り返し発言してきましたが、国有林にはそのような予算措置もなされていないため、困難です。法律の改正が必用です。

Q5 紹介していただいた兵庫県森林動物研究センターは、県の組織として運営されているのでしょうか? 野生動物管理に関しては行政からの業務委託という形で実施している団体が多いと思いますが、兵庫県では民間団体に委託せずに研究センターで管理業務を実施し、さらに研究も行っているのでしょうか? このような組織が他の都道府県にはできていないことの障害は何があるのか教えてください。
A5 兵庫県森林動物研究センターは、県の組織です。鳥獣被害の防止、野生動物出没対応、野生動物保護、森林動物指導員などの現業部門は兵庫県農林水産部、獣害防止や野生動物との共存などの研究部門は兵庫県立大学が所管しています。クマの錯誤捕獲対応や一部のモニタリングについては、民間委託も実施しています。
このような組織をもたない都府県は、行政担当者が数年で交替し、民間委託と専門家や関係者からなる委員会に依存するために、野生動物管理に必須の順応的管理の実行が困難なっています。

Q6 補完性原則において柵の管理は市区町村の責任となるのでしょうか? 設置は市区町村、管理は自治体という認識でよろしいでしょうか?
A6 鳥獣害防止特措法に基づく交付金を利用する場合は、設置は市町村、管理は自治体などの地域住民となります。

Q7 国有地での管理は所有者が責任を持って行うべきという話は非常に共感しました。私有地も土地所有者に管理をさせると所有者が死去している場合などなど、管理がきちんとされないところが増えそうだと思います。国有地は所有者が管理すべきという認識でよろしいでしょうか?
A7 私有地ついて、森林法が改正されて、所有者不明森林等に係る特例措置として、
「市町村は、経営管理が行われていない森林等について、必要かつ適当と認められる場合には、森林経営管理法に基づいて経営管理権集積計画を定め、森林所有者から委託を受けて、市町村が主体となって適切な経営管理を図ることとしています。」「不明森林共有者や不明森林所有者、不同意者は市町村が定めようとする経営管理権集積計画に同意したものとみなし、経営管理権集積計画を定めることができる特例措置」をとることができます。
www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/sinrinkeieikanriseido.html#4

はい、国有地は所有者が、特定計画に沿って、鳥獣を管理すべきです。

Q8 市町村や入会に管理を任せるのは現場の声はよく聞こえそうですが、広い視野を持った管理はできないのではないかと感じています。兵庫県のように、県が主体となって管理できるのは大変うらやましいです。設立のきっかけをご存知でしたらお聞きしたいです。
A8  はじめは、県の未利用の土地を活用する目的で、「野生動物ふれあいの郷公園(仮称)構想」からスタートし、野生動物の保全と管理(ワイルドライフマネジメント)の中核組織として実現しました。その沿革などは、以下のHPでご覧になれます。
https://wmi-hyogo.jp/

Q9 私は林業関係の仕事をしているのですが、林業も高齢化による人手不足の煽りを受けており、そもそもの職業の選択肢の中に林業がないために選ばれないのでは、との結論にいたり、総合学習で森林の授業がある小学5年生を対象としたプログラムの作成を行おうとしています。 そのため、現在の狩猟者や専門家の不足に対しても、小学生にも狩猟者という職業や野生動物管理という学問があるということを知る機会をつくることも大切ではないかなと思うのですが、もし小学生へ野生生物管理の授業を行うとしたら、まず何をとりあげますか?
A9 まずは、森林の仕組みとそこに生息している動物たち、そして森林利用の在り方としての林業や狩猟を理解してもらうことが大切だと思います。そのうえで、最近のクマ類の居住地侵入やシカの増え過ぎによる森林被害や生態系被害などをとりあげ、野生動物管理は、森林と人間、野生動物の相互関係を理解して、より良い関係をつくるために必要であることを説明されてはいかがでしょうか?

以上です。

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