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「葦の芸術原野祭」に行ってきました

8月14日から、斜里町旧役場庁舎(旧図書館)で「葦の芸術原野祭」が開催されています。ホームページによれば、「オホーツク海にそびえる知床半島の麓、北海道斜里町の旧役場庁舎を会場とし、「作品展示」「舞台」「音楽」「参加型オープンプロジェクト」を通した人々の交流、地域文化の再発見と新たな価値の創出を目的としています」とあります。以前から気になっていたので、休日を利用して行ってみました。

 

会場に着いたのは10時半過ぎ。旧役場庁舎(旧図書館)前のオープンスペースでは古本市が行われていました。


 

建物内に入ると斜里の読み聞かせサークル「おはなししゃぼん玉」による紙芝居が行われていました。お母さんや子どもたちとの掛け合いで進んでいく紙芝居を横目に見ながら、受付を済ませます。会場となっている旧役場庁舎(旧図書館)は築92年の建物です。老朽化によるリスクを了承したのち、芸術祭のチケットをいただきました。

「おはなししゃぼん玉」による紙芝居。斜里を舞台とした漁師と海の生物との交流にふれた物語だったようです。

 

会場は大きく二つに分かれていました。一階で行われていたのは「おもいでうろうろプロジェクト」。旧役場庁舎(旧図書館)にちなんだ書籍や、まちの人々が持ち寄った思い出の品々が、一階のスペースをぐるっと取り囲むように展示されていました。会場が生き物たちの拠りどころとなる木の「うろ」(樹洞)になぞらえられており、人々の記憶が集まり交流する空間となることが企図されているそうです。展示された品々には、モノに由来する思い出が書き込まれた、図書の貸し出しカード風のキャプションが添えられており、手にとってモノにまつわるストーリーを知ることができるようになっていました。会場の文脈を重視しているのが伺えます。

 

展示されている品々は、持ち主が生まれた時に作られたという湯桶、夏休みの工作の作品である段ボール製のトラクター、漁師から譲り受けた浮き玉など様々でした。初めは空っぽだった陳列棚も、次第にまちの人々が自発的に持ってきてくれるようになり、徐々に埋まっていったそうです。紙芝居後に展示を見ていた子どもたちが、シンバルを鳴らし行進するサルのおもちゃで遊んだり、ドラムを演奏したりする光景も見られました。

夏休みの工作で作ったダンボールのトラクター。昔似たようなものを作ったことを思い出します。

 

二階では企画展「北の個体群」が行われていました。複数の作家による作品(たち)が二階の空間全体に展開されており、スリッパを履かせられた四つ足の椅子たちや天井から吊り下げられた巨大な布(のちに斜里岳を表現していると理解しました)、フクロウの卵を抱く女性の絵画とそれを取り巻くように敷き詰められた乾燥した植物(アシでしょうか)、などが目に飛び込んできます。その他にも容易な理解を許さない作品(たち)が配置されていました。部屋の窓は開放され、時折外から入り込む風が布で製作された作品(たち)に動きを与えます。具体的な解説はほとんど与えられていませんので、観覧者を困惑させるかもしれません。作品に対する能動的な姿勢が求められますが、それが一方で面白くもあるとも感じました。

作品の一部。

 

これらの展示に加え、芸術祭では連日パフォーマンス公演が行われていました。この日は松本一哉氏による「独白と番」。私は18:30からの公演に参加しました。訪れた人々が松本氏とさまざまな音具を取り囲むように座ります。いろいろ起こったらいいなと思ってやらせていただきます、と松本氏が述べ、パフォーマンスが始まりました。

パフォーマンスでは、「波紋音(はもん)」と呼ばれる音階が定まっていない音具をはじめ見慣れない楽器が使用され、またボールを転がす音や足で床を擦る音など、一般に楽器とは言えないようなモノが発する音までがパフォーマンスを構成しているようでした。加えて松本氏が発する音だけでなく、ペッドボトルで水を注ぐ音、窓を閉じる音、床を踏み鳴らす音、さらには突然の朗読が始まったり火が灯されたりするなど、さまざまな音や行為がパフォーマンスの中に取り込まれていました。企画展と同様常時窓が開け放たれ、外の環境とのつながりが確保されていました(パフォーマンス中に蛾が入り込んできていました)。「北の個体群」展でも感じたことですが、このパフォーマンスも作者やアートを超えて広がる領域に開かれている印象を受けました。パフォーマンスを一方向的に聞いているのではなく、パフォーマンスの中に在る、という印象です。使用された楽器の名前がそうであるように、演者から波紋のように広がっていくパフォーマンスであったとも言えるかもしれません。ここにきてようやく、松本氏がパフォーマンス前に発した言葉が腑に落ちた気がしました。

 

私がこのような芸術祭にほぼ初めて参加したということもあって、大変面白く、また余韻が残る芸術祭であったと感じます。

葦の芸術原野祭は今月29日(日曜日)までです。ご興味のある方は思い出の品を持ち寄り、アートプロジェクトに参加してみてはいかがでしょうか(私の思い出の品も展示していただきました)。

こちらで思い出の品をあずかってもらえます(葦の芸術原野祭実行委員会提供)

 

参考

葦の芸術原野祭ホームページ

https://ashigei-art-fes.studio.site

 

(事務局・船木)

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