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北極圏からの訪問者、ヒメクビワカモメが渡来しました

沖に流氷が近づいていた2月1日、知床・斜里の海岸でヒメクビワカモメの小群を観察しました。体が小さく、胸から腹部が淡いピンク色を帯びた美しいカモメです。ヒメクビワカモメの繁殖地は北極圏。北極海に面したシベリアやカナダ北部の海岸です。冬期にはベーリング海などにやや南下するものの、北海道のような低緯度の場所で見られるのは稀な種類です。我が国の初記録は斜里の海岸で1974年1月に記録され、10年後の1984年1月にも再び斜里の海岸に群れが訪れました(※https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo1986/36/1/36_1_65/_pdf/-char/ja)。最近ではオホーツク海沿岸でしばしば渡来が確認されるようになりました。観察記録の多くが斜里の海岸部のため、この美しいカモメを求めてバードウォッチャーがこの時期の斜里海岸を訪れるようになりました。

成鳥。波打ちぎわと排水路付近を行き来していました。

観察されるのは12月末から1月のほんの一時期で、現れても2〜3日でいなくなります。訪れるタイミングは天候や流氷の接近と関係がありそうです。今回も沖には流氷が近づいていました。前日まで低気圧による荒天で、この日はまだ海が荒れ気味でした。

成鳥。胸から腹にかけての淡いピンク色とくさび型の尾羽が特徴。

オホーツク海は世界でも最も低緯度で海氷が見られる海域です。海氷は豊かな養分をもたらし海氷周辺には餌となる生物が豊富なことが知られています。知床の世界遺産登録の理由の1つがこの流氷が育む特異な生態系です。地球温暖化の進行でオホーツク海を埋める海氷の面積が減少してきています。海氷分布の最南端である知床周辺の海に毎年流氷が訪れ、ヒメクビワカモメや多くの氷海の海鳥たちが訪れ続けることを願っています。(中川元)

水面に足を着けるように飛びながら餌を採る若鳥。翼上面に現れるM字型と尾羽の黒帯が若鳥の特徴。

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