カムイワッカ湯の滝に行ってきました
先日知床自然センターで当財団事業の打ち合わせがあった際に、今後の教育プログラムの検討材料になればと思い、カムイワッカ湯の滝まで足を伸ばしてきました。
カムイワッカ湯の滝へは知床五湖手前の分岐を右に入ります。この道は知床公園線と呼ばれており、1962年に着工、1968年に開通した知床林道の一部です。当初は森林資源の開発を目的として開削されました。しかしその目的で利用されることはなく、開通後はもっぱら観光道路として利用されています。開通当時は有料でしたが、現在は無料で通行することができます。
湯の滝まではカーブの多い未舗装区間を11キロほど進みます。ところどころ道幅が細くなっている箇所があり、路肩も弱いので運転には注意が必要です。エゾシカなどの野生動物も頻繁に出没します。
湯の滝に到着したのは16時半過ぎ。まだ駐車場には4台の車が駐車しており、湯の滝を登る観光客の方も複数名見られました。かつては滝上部にある滝壺の温泉を目的に訪問する人々も多かったのですが、落石の危険のため一の滝より上流は2006年以降立ち入り禁止となっています。一の滝付近にも滝壺はありますが、水温が高くなく、入浴には適していません。私も含め、そこにいた観光客の方々は、沢登りのように立ち入り禁止区域手前まで登って折り返してくる、という形で楽しんでいました。
一方で、知床適正利用・エコツーリズム検討会議のカムイワッカ部会によれば、カムイワッカ湯の滝は以下のような魅力や価値があるとされています。
①温泉が川に流れ込み、上流に上るほど温かくなり、入浴に適する温度になるという、国内はもとより世界的?ママにも貴重な川であり、かつ、そこでの沢登りが比較的容易に体験できること
②温泉を生む硫黄山は、大量の溶融硫黄を噴出する世界唯一の火山(世界三大奇火山の一つ)であり、その温泉が流れ込むカムイワッカ湯の滝では、強酸性環境下に生きる温泉バイオマット(緑の滝)を見ることができること
③かつて硫黄の採掘がおこなわれた遺構が残っており、これまでの知床のイメージとは異なる歴史や地質を体感できること
(2020年適正利用・エコツーリズム検討会議カムイワッカ部会会議資料より抜粋)
これらのカムイワッカ地域が持つ多様な価値の活用に向けて、現在一の滝以奥の再利用の検討が開始されています(過去記事参照)。今年7月にはガイドの引率のもと試行ツアーが実施されました(現在は終了しています)。質の高い体験と公園管理・安全対策の両立という難しい課題にどのように取り組んでいくのか、カムイワッカ地域の今後の展開に注目が集まります。
なお、8月7日〜16日はマイカー規制期間です。知床五湖からカムイワッカ湯の滝までの区間は自家用車で侵入することができません。湯の滝訪問の際はシャトルバスをご利用ください。
参考資料
・斜里町史第三巻編纂委員会, 2004,『斜里町史第3巻』斜里町.
・斜里町・知床斜里町観光協会, 2020, 「カムイワッカ湯の滝 一の滝以奥の再利用について」http://shiretoko-whc.com/data/meeting/kamuiwakka_bukai/r02/kamuiwakka_R0214_shiryo6-2.pdf, 2021.8.4最終閲覧.
・知床斜里町観光協会,「カムイワッカ湯の滝『一の滝』より上流エリアへ行く試行ガイドツアー」https://blog.shiretoko.asia/2021/07/blog-post.html, 2021.8.4最終閲覧.
(事務局 船木)