お知らせ ブログ 日記

【知床コラム】第6回:うれしい流氷の接岸と悲しい油の漂着

【知床コラム】では、当財団の業務執行理事・中川元が、季節ごとにさまざまな表情を見せる知床の自然情報などをお伝えします。第6回は「うれしい流氷の接岸と悲しい油の漂着」についてです。

知床の海岸に接岸した流氷(2018年2月8日、斜里町以久科海岸)

知床の海岸に今年も流氷が接岸しました。沖まで白一色の世界です。流氷は様々な富を沿岸に与えてくれます。アムール川からオホーツク海に供給された豊富な養分は、流氷のメカニズムによって北海道沿岸にもたらされ、知床の生物を支えています。豊かな漁業資源も流氷が支えています。この時期、流氷を目的にたくさんの観光客が訪れ、数々のイベントで街は賑わいます。皆が待ちこがれた流氷の到来です。

一方、南の奄美地方の島々からは、原油の漂着という悲しいニュースが届けられました。1月14日に東シナ海で沈没したタンカーから積荷の油類や燃料の重油が流出したようです。
http://www.mbc.co.jp/news/mbc_news.php?ibocd=2018020600027898

タンカー事故による油の流出は海洋や海岸の環境を破壊し、海鳥や海生生物に大きな被害をもたらします。1997年にはロシアのタンカー、ナホトカ号の重油流出事故が発生し、北陸から中国地方の海岸に甚大な被害を与えました。

回収された油に汚染された海鳥(2006年3月6日、斜里町)

知床では世界遺産登録の翌年、2006年2月に、油で汚染された海鳥の死体が大量に打ち上がりました。知床から斜里にかけての海岸で回収されたエトロフウミズズメなどの海鳥類は6千羽近くにもなり、汚染された海鳥を食べたオオワシの死体も見つかりました。この海鳥は沖合で流出した重油にまみれて死亡し、流氷の前後に漂着したと考えられました。原因を究明することはできませんでしたが、当時サハリン沖で発生したタンカー事故との関連が疑われました。

オホーツク海の北部沿岸で生成された流氷は、南下する海流(東樺太海流)と北風によって知床など北海道沿岸にやってきます。オホーツク海で油の流出事故があると、同じように知床や北海道各地の海岸に漂着し、汚染される危険性が高いのです。2000年代以降のサハリンでは石油などエネルギー開発が進み、タンカーの航行も増えているようです。油流出事故に対しては、油の拡散防止や回収などの対策が一応準備されています。しかし、船舶の航行が出来ない流氷の時期の発生や、陸路のない知床海岸のような場所での漂着には対処出来るでしょうか。不安が残ります。知床の自然の保護は、オホーツク海全体の環境が守られてこそ成り立つのです。(中川 元)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当財団の活動は賛助会員の皆様、
寄付者の皆様の温かいご支援によって成り立っています。
ぜひ、当財団へのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

賛助会員、寄付の申し込みについて

オンライン寄付サイト「Give One」では、
知床ネイチャーキャンパス2018開催のための寄付金を募集しています。
合わせて、ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

Give One(知床ネイチャーキャンパス2018の開催にご協力を!)

-お知らせ, ブログ, 日記