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斜里の気温とマグロのはなし

2021/08/18

「今日は暑いですね・・・」「一気に寒いね・・・」
今年の春から当財団の事務所で何度も繰り返されてきた会話です。6月までは寒い日が多かったものの、7月半ばから最高気温が30度を超える日が続いた斜里。降水量ゼロの日も続き、7月28日には観測史上最高の36.7℃を記録しました。しかし、8月9日からはそれが一変。最高気温が20℃に届かない日が続き、「ストーブを点けてしまった・・・」という人の話も聞きました。これが温暖化の影響なのかと、肌感覚でもそう感じざるを得ない今夏の知床ですが、気になるのは海水温や漁業への影響です。

プユニ岬から見たウトロの街(2021年7月)

道東のトキシラズが不漁で、羅臼町の羅臼漁協では7月末までの漁獲量が前年同期比93%減だったという新聞記事がありました。秋サケの来遊予測も過去最低の水準で、専門家は4〜5年前から海水温が上昇し、多くの稚魚が死んでしまったためとコメントしています。
「道東トキシラズ不漁 前年同期比9割減 温暖化直撃、価格高等」『北海道新聞』(2021.7.31 電子版) https://www.hokkaido-np.co.jp/article/573234

また羅臼町沖の根室海峡では、比較的暖かい海を好むクロマグロの群れが到来しているという記事もありました。
「クロマグロの群れが知床に 北の海で起こる『異変』とは」『朝日新聞』(2021.8.2 朝日新聞デジタル)https://digital.asahi.com/articles/ASP814SQ3P81IIPE00T.html?iref=pc_ss_date_article

出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/daily/sst_HQ.html
7月28日の海面水温の平年差です。知床半島周辺は平年より3〜5℃高かったことが示されています。

水産庁は6月、有識者による「不漁問題に関する検討会」の報告書の中で、サケやサンマなどの深刻な不漁の原因が温暖化による海水温上昇と位置づけました。対策や政策の見直しも行われるようです。暑い、寒いの話だけではなく、知床の環境はもちろん、人々の暮らしや町の産業に関わる大きなテーマとして考えなければならないことだと感じます。

羅臼漁港(2018年9月)

話は少し変わりますが、斜里でも昭和13年ごろから数年にわたりマグロが大漁で、当時の魚種別水産額の首位を3年占めたことがありました。知布泊漁港で水揚げされたマグロは、当時敷設されていた殖民軌道のトロッコで斜里に運ばれ、市場に出荷されていました。浜はずいぶん活気があったと、当時を知る人に伺ったことがあります。マグロの大漁は数年で終わってしまいましたが、当時も海水温の影響があったのでしょうか。気になるところです。(事務局・竹川智恵)

参考
気象庁ホームページ 過去の気象データ
斜里 2021年7月(日ごとの値) 主な要素
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_a1.php?prec_no=17&block_no=0076&year=2021&month=07&day=&view=h0 最終閲覧2021.8.12
斜里 2021年8月(日ごとの値) 主な要素
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_a1.php?prec_no=17&block_no=0076&year=2021&month=08&day=&view=h0 最終閲覧2021.8.12

水産庁ホームページ 不漁問題に関する検討会とりまとめ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/attach/pdf/furyou_kenntokai-19.pdf 最終閲覧2021.8.12

斜里漁業史編纂委員会, 1979,『斜里漁業史』

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